柾目とか板目とか

この業界に長く関わっていると、様々な価値観の方々とお話する機会があります。
ふと思い出したので書いてみようと思いました。

弦楽器の、主にネック材の木取り(きどり)方について、偏見や断片的な知識のみをお持ちの方が数多くいらっしゃるようです。
製造、販売、購入の過程において共通の知識をベースにやり取りを行えば、勘違いの少ない円滑な取引が行えると思います。

板目、柾目、追い柾目についてはGoogle先生におまかせしますが、ギターのネック材として通常の使われ方を説明したいと思います。

先ずは板目の材です。
こんな感じで、平行ネック(フェン○ー系のへッドに段差がついた物の事)に使われる事が多いです。
確認はネック材を↑の画像のように木口方向から見るのがベストです。
既にある程度製材された状態から木取る場合(通常は板目、又は追い柾目で納品されます)
↓の画像のように年輪の中心とネックのセンターラインを合わせで木取ることで、グリップ成形後にも左右のバランスが取れた捻じれの少ないネックになります。
捻じれが出やすい、5弦ベース等の幅広く長いネックの場合は必須の木取り方だと思います。
しかし、この板材から複数本を木取る場合は、センターラインを合わせるのが困難な為、必然的に追い柾目の木取りになる訳です。
センター合わせで木取った場合はバランスが良い反面、弦の張力方向への剛性が低くなります。又、非常に歩留まりが悪い事になります。
職人は剛性の高い素材の選定とトラスロッドや指板材との組み合わせで、張力に対する剛性や楽器の質を担保する事になります。

ここで大切なのは、製材段階で既に「板目」であるという事実です。
「ヘッドの表側の木目が柾目になっている材で作って。」
のような「?」なお話を聞くことがあるんですね。
一応、追い柾目で木取ればイメージに近い感じにはなりますが…捻じれの問題がある事と(今後別記事にします)、正確には「柾目」ではないのです。
ネックの木取りは剛性を最重要視するので、ヘッド表面の木目は結果でしかないのです。大切なのはあくまでグリップ部の木目に狂いが出にくいように木取る事なのです。
職人は手持ちの材料と納期やコスト、質を総合的に考慮して妥協点を探るのです。

以上、取り敢えず「板目」について書いてみました。
ご自分の楽器や店頭で、又は工房や工場へのオーダーの際に参考にしていただけたらと思います。

SuzukaGuitarDesign

人生に寄り添うギター作り

0コメント

  • 1000 / 1000